理事長所信
一般社団法人 一宮青年会議所
2014年度第61代理事長
野杁晃充
はじめに
第二次世界大戦の戦火により焼け野原となったこの地域まちを、自らの力で復興させようという若き青年たちの信念が結集し、一宮青年会議所は1951年に全国で8番目の青年会議所として誕生しました。そして63年の長きに渡り先輩方のたゆまぬ努力と情熱のもと、この地域まちで「明るい豊かな社会」を実現しようと連綿と活動を続けてまいりました。その軌跡は光り輝いており、一宮青年会議所からは傑出した若きリーダーたちが政財界に輩出され、一宮シティマラソンや市民演劇に代表されるような素晴らしい活動を展開されてきました。
しかし時は流れ、世間では「青年会議所しかない時代」から「青年会議所もある時代」と言われるようになり、良い意味でも悪い意味でも、この地域まちにおける青年会議所の存在感が薄れてきているように感じています。私たちがどんなに情熱を傾けて活動しようとも、それが市民の方々に伝播していかなければ活動としては成功とはいえません。言うなれば、私たちは「明るい豊かな社会の実現」という創始の志は受け継ぎつつも、組織の形態や活動の内容は時代に即した形へと見直しが必要となっているのではないでしょうか。私たち青年会議所の会員は地域の将来を担うリーダーであります。変革を恐れず前に進み、この地域まちに大きなインパクトを与えるべく新たなステージへと進みましょう。
私たちは若さという無限の可能性を秘めています。青年経済人としての溢れる情熱と仲間たちの絆を核として、ひと・まち・未来を愛するこころをつむぎあい、青年会議所にしかできない活動とは何かを常に自問し、会員一丸となって新たな地域まちづくりに挑戦してまいります。
活気あふれる郷土ふるさとの創造
2012年秋、一宮市民の長年の願いであった尾張一宮駅前ビル(iビル)が完成し、2014年春に一宮市役所新庁舎が完成すると、一宮駅周辺の人の流れが変わるであろうと期待されています。閉塞感の漂う中心市街地の活性化は多くの一宮市民が願うところでありますが、その実現は容易なものではありません。私たちが日々行っている青年会議所活動は「市民意識変革活動」です。私たちは地域の将来を担う若きリーダーという立場で、行政機関や地域の人々、各種団体のオピニオンリーダーとの意見交換や協働活動を通じて、市民の意識を「無関心」から「関心」へ、そして「行動」へと変革するきっかけを作り、中心市街地の活性化を後押ししたいと考えています。
また一宮青年会議所では、2012年からご当地グルメ選手権「ICHINOMIYA郷土ふるさとグルメグランプリ」を継続事業として開催しています。伝統と文化の産物であり「地域まちのたから」とも言える特産食材や食品を広く市民に周知することは、自分達の住むこの地域まちに対する誇りや郷土愛を育みます。また会員だけでなく、出店者・参加者・協賛者など多くの市民が一緒になって新たなご当地グルメを産みだすことにより地域の活性化をはかります。今後は、選ばれたご当地グルメを「地域ブランド」として確立するための仕組みが必要となり、今まで以上に多くの市民が参加して一宮市全体で盛り上がれるような事業としていかなければなりません。本年は事業の完成度を高めつつスケールアップし、同時に「郷土ふるさとグルメグランプリ」事業の最終ゴールを見据えた長期プランニングの策定に着手します。様々なつながりを持つ青年会議所の特徴を最大限に活用し、人々の笑顔と活気にあふれる郷土ふるさとを創造します。
「生きる力」に満ちた青少年の共育
子どもたちは未来を担う「地域のたから」であり「国のたから」です。しかし昨今、いじめや暴力、引きこもりなど子どもたちに関わる様々な問題や事件のニュースが後を絶ちません。子どもは「親を映す鏡」と言われるように、これらの諸問題は子どもだけでなく、規範を示すべき親や地域の大人すらも「生きる力」を失っていることが原因ではないでしょうか。自分だけ良ければよいと目先の利益だけを追い、周りのことを考えず身勝手な行動をしていませんか?便利で快適な生活に慣れ過ぎて、新しいことに挑戦する気概を失っていませんか?決意をもって打ち立てた夢や目標を、辛いからと言って道半ばで諦めていませんか?
人は一人では生きてゆけません。であるからこそ、他者への思いやりの心が大切であり、自らを厳しく律しながら、自分の周りの人々に感謝しながら生きてゆく気持ちが大切なのではないでしょうか。また、混沌としたこれからの時代を生き抜くために、困難に立ち向かう勇気、現状に妥協することなく夢や目標に向かっていく情熱や行動力が必要とされるのではないかと思います。人は自身の生き方を簡単には変えられない生き物です。しかし、子どもたちの純真な心は、今までにない体験をすることで新たな価値観を育むことができるはずです。私たちは、親や地域の大人たちと協働して、子どもたちの一生の記憶に残るような体験や活動の機会を提供し、「思いやり」の心にあふれ、心身ともに健全な「生きる力」に満ちた青少年を育成します。
青年経済人の資質向上
私たち青年会議所の会員の多くは、中小企業の経営に携わる青年経済人であり、学び舎としての役割を担う青年会議所において、会員の資質向上は極めて重要なことであります。ここ数年で会員の大半が入れ替わり、2014年度は会員の半数以上が入会3年未満となります。新入会員に対しては、青年会議所活動の意義や活動内容を伝えるだけでなく、社会人の基本である礼節やマナー、一宮青年会議所の歴史や先人達の崇高なる志を伝えてまいります。また私たち会員が、地域における変革運動の先導者であるために、そして青年経済人として社業を発展させていくためにも、周りの人々を惹きつけ引っ張っていく「リーダーシップ」を身につける必要があります。青年会議所には日本JC公認プログラムという、会員個々のリーダーシップや人間力を高めていくための研修制度が確立されており、本年はこのプログラムを活用した研修事業を実施してまいります。
また昨今の日本経済は依然として停滞ムードにあり、企業経営は決して楽なものではありません。今日行っている商いが未来永劫も安泰であるという保証はなく、歴史を振り返っても現状維持の経営ではいずれ衰退していく可能性が高いことは自明であります。先の読めないこれからの時代を生き抜くために、顧客が本当に望んでいる商品やサービスを調査し、自社の経営状況や外部環境を分析し、つねに新しい付加価値を創造することに挑戦していく精神が必要ではないでしょうか。歴史は私たちにとって最高の教科書です。これまでにも優れた経営リーダーが将来の可能性を信じ、「チャレンジスピリット」をもって逆境を乗り越えてきたことは歴史が証明しています。私たちは先人達の英知に学び、これからの企業経営に必要な「チャレンジスピリット」をもった青年経済人を育成し、地域経済の発展に寄与します。
活力あふれるLOMの創造
「拡大活動こそがJC運動そのものである。」40歳で卒業を迎える青年会議所の性質上、同じ志を持つ仲間を毎年増やしていかなければ組織はいずれ消失してしまいます。一方で仲間が増えれば地域へ与えるインパクトは今以上に大きくすることができます。「明るい豊かな社会」を実現するには、会員拡大はいつの時代でも私たちの最重要課題であります。しかし会員の拡大は容易なことではなく、気合と根性だけで解決する問題ではありません。日本には拡大を成功させているLOMが少なからず存在します。他LOMの成功事例を調査検討し、具体的なアクションを実行します。そして一宮青年会議所の全会員が会員拡大の大切さを認識し、理事長を先頭に全会員で拡大活動を展開し必ず会員拡大を成功させます。
また私たち会員がいつも疲れて暗い顔をしていては、会員拡大はおろか、私たちの社会奉仕活動を成功させることはできないでしょう。笑顔と活力にあふれ、固い絆で結ばれた人々の集まりであればこそ、この組織に入会したいと思うでしょうし、周囲の人々も私たちの活動を応援してくれるはずです。会員間および会員の家族間の交流をはじめ、姉妹提携している大韓民国大邱江北JC会員との国際文化交流など、様々な交流活動を通して友情や絆をより強固なものとし、メリハリをもって、楽しく活き活きとJC活動に邁進しましょう。
また日本全国そして世界中にネットワークを持つ青年会議所には、「明るい豊かな社会の実現」そして「世界平和」という崇高な理念を掲げて活動する同志が何万人もおり、他地域で活動する会員たちとの交流は良い意味で刺激的でもあります。国際青年会議所・日本青年会議所・東海地区協議会・愛知ブロック協議会・西尾張エリアへの出向や、各種大会への参加やセミナーの受講は、LOMの活動だけでは感じられない新たな価値観を見出す貴重な機会であり、一宮青年会議所という組織に新たな活力を産みだすでしょう。こうした外部組織への出向や各種大会への参加などは会員の義務ではなく権利ですが、1人でも多くの会員が貴重な体験や新たな仲間を得られるよう積極的な支援を展開してまいります。
新たな運営組織の確立
公益法人制度改革に伴い、一宮青年会議所は2013年に一般社団法人一宮青年会議所へと移行しました。しかしながら2008年の総会決議を尊重し、公益法人格の取得を目指す方針に変わりはありません。公益事業比率のクリアが当面の課題となりますが、今年は思い切った変革により、従来の組織体系・予算配分・運営ルール等を見直し、安定的に50%を維持できる土台作りを行います。また将来の公益法人格取得を見据え、会員の知識や理解の向上についても重要課題として取り組み、伝統と誇りある「ナンバー8」の名にふさわしいLOMづくりを目指します。
また私たち一宮青年会議所は、長年にわたりこの地域まちの未来を想い活動を続けてまいりましたが、残念ながら市民の認知度が高いとは言えないのが現状であります。私たち会員が多くの時間とエネルギーを費やして素晴らしい活動を企画・実行したとしても、それが市民の方に速やかに正しく伝わらなければ、市民の意識は変わらず、活動の効果は大きく減少してしまいます。私たちは明確な広報戦略を策定し、今まで以上に広報活動に力をいれるべきです。広報活動のターゲットなる対象者を定義し、様々な広報チャネルの中から効果的なものを選択し、できるだけわかりやすい言葉で、タイムリーに情報発信することで、一宮青年会議所の存在感と地域に対する発信力を高め、市民の意識変革を押し進めます。
結びに
『為せば成る為さねば成らぬ何事も成らぬは人の為さぬなりけり』
江戸時代に名君として活躍された米沢藩藩主上杉鷹山ようざんの有名な言葉です。大事を成し遂げようとするとき、目の前に立ちはだかる苦難の道を歩みだすには相当の勇気と覚悟が必要です。或いは始める前から自分には無理だと諦めて挑戦しないことすらあるでしょう。鷹山ようざんの言葉は、行動を起こすことの大切さを教えてくれます。
今、一宮青年会議所は転換期を迎えていると感じています。私たちがこのまま何も変わらなければ、組織はどんどん停滞・縮小し、この地域まちにおける存在感が低下し、ひいては創始の志である「明るい豊かな社会の実現」から遠のいてしまうのではないでしょうか。今こそ、私たちは行動を起こす時です。私たちは、「行動する若き市民(Young Active Citizens)」の代表として、地域社会の課題に正面から向き合い、地域の人々を巻き込み、「持続可能な解決策」を提供しなければなりません。私たちの郷土ふるさとである一宮のため、そして私たちの愛するこの一宮青年会議所のため、変革の能動者として挑戦を続けてまいります。
困難を乗り越えたその先に、希望に満ちた新しい時代があることを信じて。